かゆみと痛みは別もの?

「かゆみ」と「痛み」は、人間に備わる五感のなかの触覚を通じて感じる感覚で共通しています。

触覚は、五感のうちでも最も原始的な感覚といわれ、人間が生きていく上で欠かすことができない感覚です。
皮膚には感覚神経の「触覚受容体」があり、さまざまな刺激を受けると、感覚神経を通じて中枢神経(脊髄から脳)へ情報を伝え、触覚を生み出しています。
触る、熱い、かゆい、痛いなどの物理的な刺激は、神経を介して脳へ伝わり、脳で刺激が認識されているわけです。
物理的な刺激は、神経を伝わる際はそのまま伝わるのではなく、電気化学的なシグナルに変換して伝わっていきます。

医学は臓器別に細分化して発展してきたため、医療の現場では、「かゆみ」と「痛み」を別物として扱います。
皮膚でかゆみ症状がおきてつらいと、皮膚科に行きます。かゆみの起きているところによっては、眼科や耳鼻科、婦人科にいくこともあるでしょう。
一方で、痛みの場合は、筋肉や骨格の痛みは整形外科、腹部や内臓の痛みは内科、頭部の痛みは脳外科にかかることになります。
医学は臓器別部位別なので、症状が起きた部位によって診療科目が変わっていくことになります。

先ほど、かゆみと痛みは五感のひとつである触覚に含まれ、皮膚で受けた刺激は感覚神経を介して脳へ伝わることをお話ししましたが、「かゆみ」と「痛み」を伝える神経の線維は異なることが分かっています。かゆみと痛みの刺激を伝える電線が異なることになります。

一方で、アトピーで強いかゆみのため皮膚を掻き壊し、皮膚が痛くなると、皮膚のかゆみがなくなることが知られています。
伝える神経が異なるからといって全くの別物ではなく、情報を受けている中枢神経(脳や脊髄)で情報を統合して、「かゆみや痛み」を選択しているのではないかと考えられています。

実際に最先端の研究では、脊髄にあるグリア細胞(アストロサイトといいます)は、皮膚から受けた刺激を脳へ伝えていく中継地点として働き、慢性的な痛みだけでなく、アトピーの強いかゆみにも影響を与えていることが分かってきています。

※グリア細胞は、神経細胞ではない細胞の総称で、神経細胞の50倍程度あり、神経伝達だけでなく、脳や神経の恒常性を維持する働きがあると考えられています。

また医療の現場の臨床的な知見からは、骨格アライメントを正していく治療により、アトピーの強いかゆみだけでなく、筋肉や骨格からくる慢性的な痛みも改善していくことが分かっています。体全体からアプローチする統合医療では、かゆみと痛みの症状は別ものではなく、一体としてアプローチしていくのです。

臓器別部位別の医学では別物として扱われる「かゆみと痛み」は、骨格アライメントからアプローチしていくと別物ではなく、体に備わる治癒力が回復していくと、回復具合に応じて、かゆみや痛みの辛い症状が一歩ずつ改善していくようになります。